A First-Year Student of the Forest
森を歩いていると、つい大きな木に目が向く。
何十年、あるいは何百年もそこに立ち続けてきた木々は、それだけで存在感がある。太い幹を見上げながら、この木はどれだけの季節を見てきたのだろうと思う。
けれど、その日見つけたのは足元の小さな芽だった。
落ち葉の間から顔を出したばかりの、小さな小さな緑。
背丈はほんの数センチほどしかない。
森の中では目立たない存在だ。
もし急いで歩いていたら、きっと気づかなかっただろう。
その芽を見ながら、この森にある大きな木も、最初はこんな姿だったのかもしれないと思った。
風に揺れ、雨に打たれ、暑い夏や寒い冬を越えながら、少しずつ大きくなっていった。
今では立派な木になっていても、その始まりは誰にも気づかれないほど小さな芽だったはずだ。
私たちはつい、完成したものに目を向けてしまう。
大きな木。
立派な建物。
誰かの成功。
けれど本当は、そのどれにも小さな始まりがある。
誰にも見られていない時間や、少しずつ積み重ねてきた日々がある。
森の一年生を見ていると、そんな当たり前のことを思い出させてくれる。
今はまだ小さくてもいい。
目立たなくてもいい。
大切なのは、ちゃんと根を張っていることなのかもしれない。
来年この場所を訪れたとき、この芽はどれくらい大きくなっているだろう。
そんなことを想像しながら、しばらくその小さな緑を眺めていた。

