ゆっくり走る人が増えた。

最近、明日香を自転車で走る人が増えたように思う。

田んぼの間の細い道を走ったり、
気になる場所があれば自転車を止めたり。

車で走っていると、
そのまま通り過ぎてしまうような場所で、
立ち止まっている人をよく見かける。

先日も、
田んぼの前で自転車を止めて、
写真を撮っている人がいた。

そこは、私にとっては何でもない場所だった。
昔からある田んぼと、その向こうに見える山。
何度も通って、何度も見てきた景色。

でも、
その人は自転車を降りて、
しばらくそこから動かなかった。

「そこ、きれいやったんや。」

知らない誰かに、教えてもらったような気がした。

明日香で暮らしていると、
田んぼも山も、
いつの間にか日常の背景になる。

毎日そこにあるものを、
毎日きれいだとは思わない。

けれど、
ときどき外から来た人が立ち止まってくれる。

その姿を見て、私ももう一度そこを見る。

有名な史跡だけじゃなくて、

田んぼの間を通る道や、
季節ごとに色を変える山や、
その途中にある何でもない風景も、

明日香のいいところなのかもしれない。

自転車くらいの速さだから、
見えるものがある。

そして、
その人たちが立ち止まることで、

ここで暮らす私にも、
もう一度見えるものがある。

ずっと当たり前にあるものほど、
その良さには案外気づかないのかもしれない

「そこ、きれいやったんや。」
今日もまた、誰かに教えてもらう。

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