朝一番の明日香。
田んぼの間を歩いていると、稲にも、道端の草にも、小さな朝露が残っていた。
朝の光を受けて、ひとつひとつがきらきらと輝いている。
少し離れたところには、赤い彼岸花。
その向こうには、いつもの家並みが見える。
何度も通った道なのに、こんなにきれいだっただろうかと思う。
朝露は、太陽が昇ればいつの間にか消えてしまう。
昼間に同じ場所を歩いても、きっと気づかない。
そこにはいつもの田んぼがあって、いつもの山があって、いつもの暮らしがあるだけだ。
でも、少し早く起きて歩いてみると、同じ場所がまるで違って見える。
考えてみれば、私たちはいつも同じ景色を見ているようで、実はそうではないのかもしれない。
朝の光も、風の匂いも、草についた小さな水滴も。
季節や時間によって、少しずつ違っている。
毎日そこにあるから、いつでも見られると思ってしまう。
けれど、本当はその日、その時間にしか出会えない景色がある。
朝露が消えたあとも、田んぼは変わらずそこにある。
明日もまた、同じ道を歩くことができる。
それでも、今朝見た光は、今朝だけのものだった。
何でもない一日にも、そのときにしか見られない美しさがある。
少し早く起きた朝。
いつもの明日香が、少しだけ特別に見えた。

