Walking Beneath the Trees
夏が近づくと、この道を歩きたくなる。
木々が頭上を覆い、強い日差しをやわらげてくれる。
風が吹くたびに葉が揺れ、地面には木漏れ日が落ちる。
特別な景色があるわけではない。
有名な建物もなければ、観光客で賑わう場所でもない。
それでも、この道を歩いていると、不思議と気持ちが落ち着いてくる。
私たちは普段、何かを目的に歩いている。
仕事へ向かうため。
買い物をするため。
子どもを迎えに行くため。
けれど、この道には目的がない。
ただ歩く。
それだけだ。
立ち止まって木を見上げたり、足元の葉っぱを見たり、鳥の声に耳を澄ませたりする。
そんな時間を過ごしていると、自分がどれだけ急いでいたのかに気づく。
明日香村には、こういう場所がたくさん残っている。
歴史の舞台として知られる村だけれど、この土地の魅力は遺跡だけではない。
昔の人もきっと見ていたであろう木々の緑や、季節ごとに変わる風の匂い。
そうした何気ない風景が、今も変わらずここにある。
木陰の道を歩きながら、そんなことを思った。
何かを得るためではなく、
ただ静かな時間を過ごすために歩く道。
それだけで十分なのかもしれない。
明日香村の夏は、もう始まっている。

