A Rice Field Reflecting the Sky
田植え前の田んぼは、不思議な風景をつくる。
まだ稲は植えられていない。
けれど水を張った田んぼには、空が映り込む。
青い空も、流れていく雲も、そのまま足元にある。
空を見上げなくても、空が見える季節だ。
明日香村を車で走っていると、思わず足を止めたくなる場所がある。
水面が風に揺れ、雲の形が少しずつ崩れていく。
その景色はほんの短い間だけ現れる。
稲が育ち始めれば、水面は少しずつ緑に覆われていくからだ。
季節には、それぞれしか見ることのできない風景がある。
桜の季節があり、新緑の季節があり、田植え前の田んぼが空を映す季節がある。
同じ場所でも、同じ景色は二度とない。
だからなのだろうか。
何気ない田んぼの風景なのに、なぜか写真を撮りたくなる。
なぜか立ち止まってしまう。
空を見上げることはあっても、足元に映る空を見つめる機会はそれほど多くない。
けれど、この季節の田んぼは教えてくれる。
空は遠くにあるだけではなく、すぐそばにもあるのだと。
水面に映る雲を眺めながら、そんなことを思った。
田植え前の短い季節。
明日香村には、足元に空が広がっている。

